【考察】 海外MBAは弁護士の役に立つのか③(海外MBAのデメリット)

2022年10月28日

 前回は海外MBAのメリットをあげましたが(【考察】 海外MBAは弁護士の役に立つのか②(海外MBAのメリット))、今回は日本国内でMBAをとる場合と比較した、自分にとっての「海外MBA」のデメリットを整理したいと思います。

海外MBAのデメリット①:キャリアの中断

 まず、最大のデメリットとして、キャリアの中断があげられます。

 海外に来てビジネスの勉強をする以上、日本国内で弁護士業務を続けることは不可能であり、キャリアの中断は不可避だと思います。業務をオンラインで処理することで、キャリアを中断せずに海外MBAを取得することもあり得るのかもしれませんが、容易ではありません。

 オンラインMBAという選択もあるかもしれませんが、私は対面での授業や経験を重視したく、また業務の性質上も裁判所への出頭がマストだったため、キャリアを中断してMBA留学をすることにしました。

 端的に言えば、機会損失を含めたこの間(私の場合は1年4か月の予定)のキャリアの中断と、海外MBAを取得することのメリットとの比較考量が、海外MBAを選択する際の最大のポイントのように思います。

海外MBAのデメリット②:コスト

 2つ目の海外MBAのデメリットとして、そのコストの高さが考えられます。

 海外MBAは、国内のMBAと比較してコストが高くなりがちです。国内MBAの授業料は、数百万円というイメージですが、海外MBAだと授業料だけで1,000万円以上かかるところもザラにあります。

 また、国によるのでしょうが、海外での生活費もかかってきますので、日本国内でMBAを取得するよりも感覚的に数倍のコストがかかることになるでしょう。家族連れになると、単身よりもさらにコストは増加します。

 もっとも、学校によっては奨学金の制度を利用することで、学費をかなり抑えられるところもあります。

海外MBAのデメリット③:学びの質

 3つ目の海外MBAのデメリットは、学びの質です。

 国内MBAで日本語で学ぶ場合と比較して、海外MBAの授業は通常英語で行われるため、その理解度、習熟度はネイティブレベルの英語力がない人にとっては大きく低下します。特に、私のような純ドメだと、その差はかなり顕著です。私自身、日本語であればもっと早く深く理解できると思ったことが何度もありました。

 メリットで述べた教育の質やダイバーシティに加え、海外の企業の最新の情報やケースに触れる以上は、この点は甘受しなければならないポイントなのかもしれません。

海外MBAのデメリット④:ネットワークの範囲

 最後のデメリットとして考えられるのは、業務に関連するネットワークの範囲です。

 これも、当然いろいろな考え方があると思いますが、日本国内で日本人相手に仕事をすることを考えた場合には、ネットワークも当然、日本人であったり日本企業の関係者が中心になるべきであり、それを踏まえると国内MBAでそのようなネットワークを築くという選択肢も考えられると思います。

 他方で、海外MBAだと日本人は基本的にマイノリティですので、グローバルなネットワークを築くことができる反面、私のような国内案件の多い弁護士にとっては、仕事に直結するかという意味でどれほどの効果があるのか未知数です。

 渉外系の業務を多く扱っていたり、グローバル展開をしているような法律事務所であれば、そのようなネットワークもダイレクトに業務に役立つように思います。

小括

 以上が、海外でMBAを取得することのデメリットとして私が考えるポイントですが、想像の域を出ないところがある部分はご了承ください。

 海外MBAが弁護士の役に立つのかという問いは、また引き続き、自問自答しながら検討していきたいと思います。