【MBA】HEC Paris Term4の授業について:Elective

2022年10月2日

Final Leadership Projectにて

Electiveとは

MBAラストとなるTerm4は、Electiveとして36科目の中から各自で必要な数の授業を選ぶ期間です(9月入学の方は、Term3がElective、Term4がSepecializationとなります)。

通常は8科目を選ぶのですが、クラブ活動をしておらずリーダーシップクレジットが足りない場合には、9科目をとってうち1科目をリーダーシップクレジットに換算することもできます。

またMBA ProjectやExchangeを選ぶことも可能で、この辺りは実際に選ばれた方から話を聞いてみると良いと思います。

授業自体は、Field Trip系の人数制限のある授業や、希望者の人数が少なく開講しないこととなった授業以外は、基本的に希望するものを履修することができたと思います。

ただ、スケジュールの関係もあり授業時間が重複する授業も少なくないので、完全に希望する授業を全て取れるということはおそらくなく、どうしても取りたい授業から決めていき、あとはスケジュールの関係で履修可能な授業から選んで行くということになります。

同期には、インターンシップなどの関係で、3月に開講される授業を集中的に履修したり、インターンシップと並行しながらオンライン授業を中心に履修している方もいました。

私の履修選択ですが、まず企業法務に関連するData PrivacyとM&Aを選びました。

その上で、自分の興味関心と開講スケジュールから残りを選んでいった結果、受講科目は次の9つになりました。

またTerm4の期間中にはFinal Leadership Projectというイベントもありました。

1) Luxury Management

2) Data Privacy

3) Managing Publicly Listed Companies

4) Organizational Design and Management

5) Positive Psychology for Managers

6) M&A

7) CustomerCentric Marketing Strategies

8) The Future of Retail in a Digital World

9) Strategy in the Age of AI

Luxury Management

Luxury Management は、Web上のビデオコンテンツとZoomによるオンライン授業によるハイブリッド形式の授業で、Luxuryの意義・特色、歴史、Premiumとの違い、成長戦略、マネジメント手法などを学びました。

ラグジュアリーはこれまで勉強したことのない分野でしたが、冬休みの間にHEC Parisの教授陣が出している『ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか』(Kapferer, Jean-Noel、Vincent Bastien著 、2011、東洋経済新報社)を読んで勉強したところ、ラグジュアリーの基本的な考え方や歴史、通常のMarketingとの違い等を理解することができ、その上で授業を受けることができたので理解を深めることができました。

ラグジュアリーに限らず、なじみのない分野では日本語で本を読んで概要を頭に入れてから授業を受けるのも、学習の効率化として良いと思います。

最終課題はLuxury分野におけるAIとBig Dataに関するプレゼンで、AIボットやビッグデータの活用方法といった各有名Luxuryブランドのデジタル戦略を知ることができてとても参考になりました。

Data Privacy

Data Privacyは、データの取扱いの問題やその活用について学ぶ授業で、個人データの保護(主にGDPR)、倫理的問題、機械学習とアルゴリズム開発の基礎などを学びました。

授業中はゲストスピーカーの公演も多く、欧州大企業のDPO(データ・プロテクション・オフィサー)、データ関連を専門とする弁護士、個人データのリスクをAIで分析把握する起業家、スタンフォード大学の計量心理学者、実際にAIを活用しているData scientistなどのゲストスピーカー達から様々な視点での話を聞くことができました。

またカナダにおけるヒトを対象とした研究に関する倫理行動指針(TCPS2)を学ぶモジュールもあり、研究に際しての実際のデータ取得の留意点や注意事項を学ぶことができ、参考になりました。

Managing Publicly Listed Companies

Managing Publicly Listed Companiesは、上場会社のマネジメントのうち、株式市場分析、IPO、株主還元、株式発行、企業再編(分割、合併、Spin-off)などを、主に財務面と手続の要所を中心に学びました。

EUとアメリカの上場企業におけるマネジメントや規制といった点が中心でしたが、株式発行による資金調達の手法等について、日本の会社法における制度設計やその根本にある考え方の違いが分かって勉強になりました。

授業タイトルに「マネジメント」とついているので、Advanced Management Specializationで履修したようなソフト面が中心の授業かと思っていたところ、実際の内容はファイナンス領域のものでしたが(他にも同じ誤解をしていた学生が少なからずいました)、これはこれでよかったと思っています。

Organizational Design and Management

Organizational Design and Management は、Web上のコンテンツとZoomによるオンライン授業で、複数のフランス企業を題材に、ビジネスモデル分析、組織の報酬設計、企業文化や組織構造の分析や変革、成長戦略などを学びました。

オンライン上のコンテンツでは、Peer Reviewを通じて他の生徒の学習の進捗や、課題に対する意見やアイデアを知ることができて、クラスでのディスカッションとはまた違った面白さがありました。

コンテンツ自体もかなり良く作りこまれている印象で、基本的に時間を選ばずに学習を進めることができるため、Electiveの中でもおすすめの授業です。

Positive Psychology for Managers

Positive Psychology for Managersは、ポジティブ心理学と呼ばれる領域に関する授業で、3日間の短期集中で完全オンラインにて行われました。

幸せに関する科学的な分析、事象に対する捉え方・感情の持ち方、Noiseへの対処、瞑想、他者との関わり方などを学びました。

私がHEC Parisで受けたMBAの授業でかなり異質な授業であり、受講した生徒の中でもかなり賛否の分かれる内容でしたが、哲学的な問いや議論もあり、個人的には今後の人生のヒントとなるような面白い内容だったと思います。

途中、「世界で一番幸せな人」と呼ばれているマチウ・リカール氏の講演もあり、少ない時間でしたが世界で一番幸せと言われる人の考え方を垣間見えたことも面白かったですし、最後の授業での教授からの我々へのアドバイスが、「Sleep Well」だったことも印象的でした。

Mergers and Acquisitions

Mergers and Acquisitions は、M&Aの財務面に関する授業で、実際のM&Aのケースについて、エクセルを使った分析方法を学びました。

6回ある授業のうち、2回目の授業がゲストスピーカーによる講演で、どういうわけか宇宙ビジネスの現状という内容でしたが、それはそれで面白かったです。

授業の最後には、最近のM&Aのケースを1つ選んで分析と評価を行うグループプレゼンがあり、私たちのチームはLVMHとTiffanyのケースを選びましたが、他の2グループと被ってしまいました。

Customer Centric Marketing Strategies and Tactics

Customer Centric Marketing Strategies and Tacticsは、マーケティング分野に関する授業のひとつで、ビジネスモデルの各次元における顧客中心主義的なアプローチなどを学びました。

P&G出身で写真家としても活躍している教授の授業は、具体的で分かりやすく、何度かコールドコールを受けてしまったものの、個人的にはTerm4で一番良かったと思う授業でした。

日本のマーケットで消費者インサイトを捉えた成功例として、P&Gのレノアの話が出されたことも印象的でした。

任意の課題として、自身のValue Propositionを添削してもらう機会もありましたが、その際に私の弁護士としてのValue Propositionについてクラスで議論してもらうこともでき、大変参考になりました。

The Future of Retail in Digital World

The Future of Retail in Digital Worldは、百貨店やアパレルなどの小売業の歴史、伝統的な戦略から、D2CやDNVBなどといった最新のトレンド、近時の消費者の傾向(DISCO)、小売業におけるSustainabilityなどを学ぶ授業でした。

小売業の領域におけるAI、Big Dataの最新の活用事例として、街を歩く人の服装から次の流行を予測するという試みや、課題でファッション分野における戦略の分析や提案を検討したことが、特に面白かったです。

たまに訪れていたベルサイユ近郊のショッピングセンターが、ヨーロッパ最古のショッピングセンターの一つだったという発見もありました。

Strategy in the Age of Artificial Intelligence

Strategy in the Age of Artificial Intelligenceは、ケーススタディを中心として、知財戦略、Disruptive innovation、Innovation Management、Platform Businessなどを学ぶ授業でした。

Term2で学んだStrategyの延長として、プラットフォームビジネスなどの比較的新しいビジネスの展開の仕方、各企業の戦略や、ビジネス上の悩ましい点を知ることができ勉強になりました。

Final Leadership Project

Final Leadership Projectは、パリのオペラガルニエで行われたチーム対抗の謎解きゲーム大会です。

チームは到着順に作られ、私は気の知れた仲間たちと迷子になりかけながらも、それぞれの連携プレーで最初のクリアチームになることができました。

クリア後は、オペラ座にかけて仮面をつけての写真撮影を行い面白さを競うフォトコンテストもありました(冒頭の写真)。

また終了後はセーヌ川に移動してのカクテルパーティーで、私が留学したときはコロナ禍で学校主催の大規模なパーティーはほとんどなくなっていたため、私が参加した唯一の公式パーティーとなりました。

まとめ

以上が、私が履修したTerm4の授業です。Term4はそれぞれが授業を選ぶので、毎回違うクラスで授業を受けることになり、その度に新たにグループを作り直すなどの手間もありますが、Term3までで仲良くなった友人たちにも助けられながら楽しく学ぶことができました。

またExchangeやDouble Degreeのプログラムを利用して他校のMBAからHECに来て学ぶ生徒も多く(アメリカからの留学生が多かった印象です)、そのような生徒と仲良くなる機会もたくさんありました。

MBA,MBA生活

Posted by のすけ