【エッセイ】HEC Paris出願時のエッセイの内容①
はじめに
今回から、私がHEC Parisの出願時に提出したエッセイについて、書きたいと思います。
私が出願した2020年時点では、HEC ParisがMBAの出願者に求めるエッセイは、6つ(うち1つはoptionalなので、書かなくても可)なのですが、これに加え、出願オンラインフォーム上で6つの文章(ミニエッセイ)を書く必要があるので、合計12個のエッセイを書く必要がありました。
各エッセイへのアプローチとしては、純ドメらしく、日本語で回答を考え、日本語の文章を作成し、それを英語にしていくという方法をとりました。日本語の文章を作成する段階と、英語にした後の段階で、それぞれAGOSの日本人カウンセラーとネイティブカウンセラーにチェックしてもらっています。
HEC Parisの出願に必要なエッセイ
各エッセイのお題は、次のとおりです。ニュアンスが英文とは異なるかもしれないので、その点はご容赦ください。
7番目以下がミニエッセイで、カッコ内の字数制限は英語での語数です。
- なぜ今、HECのMBAなのか。あなたのMBA後のキャリア目標は何で、そのためにHECのMBAはどう役に立つのか(最大500語)。
- あなたが今までに達成した一番大きなことは何か(最大250語)。
- ビジネスの世界では、リーダーシップと倫理が絡み合う場面があるが、あなたがこのような問題に直面した状況を説明し、それがあなたにどのような影響を及ぼしたか説明しなさい(最大250語)。
- あなたの人生が今と全く異なるものだとしたら、何をしているか(最大250語)。
- 次から1つ選んで回答しなさい(最大250語)。A)あなたの国や町を始めて訪問した人に、どのような建造物や場所を紹介しますか。また、それはどうしてですか。B)国際的に成功している特定の本、映画、演劇のうち、あなたそれに値しないと思うものを、例を挙げて分析しなさい。C)あなたが一番尊敬する人物は誰で、それはなぜですか?どの分野でも構いません。
- オプショナル:あなたがほかに伝えたい情報があれば、記載して下さい(最大900語)。
- ほかにどのMBAに応募していますか、それはなぜですか(最大100語)。
- 仕事の立場を説明してください(最大200語)。
- MBA直後のキャリアゴールについて、説明してください(最大200語)。
- MBAの教育費用をどのように用意するか、説明してください(最大250語)。
- 子供時代、休暇、交換留学、転勤など、特筆すべき海外経験があれば教えてください。
- クラブ、組織、趣味、スポーツ、芸術、地域社会活動、政治など、課外活動を教えてください。
以下では、それぞれのエッセイに対し、どのようにアプローチしたかを書きたいと思います。
エッセイ1:なぜMBAなのかに対する私のアプローチ(Why MBA)
問:なぜ今、HECのMBAなのか。あなたのMBA後のキャリア目標は何で、そのためにHECのMBAはどう役に立つのか(最大500語)。
このエッセイについては、①私が成し遂げたいキャリアの目標、②これまでやってきたこととその限界、③HECのMBAであることの必要性、という順序でアプローチしました。
当初は、企業法務弁護士、倒産事業再生弁護士、パートナー弁護士として、それぞれのキャリア目標とMBAの意義を考えていました。しかし、カウンセラーと相談した結果の上、字数制限に加え、企業法務弁護士やパートナー弁護士というよりも、倒産事業再生弁護士としてのキャリアに絞った方が周りと差別化でき、具体的かつ明確に説明ができると感じました。
そこで、倒産事業再生弁護士としての側面から、以下のように回答しました(実際に提出したものからだいぶ脚色、抽象化、省略しています)。
答:
私の弁護士としてのキャリア目標は、豊富なビジネス知識を持つ弁護士として、より多くの企業を守り、雇用、技術及び産業を救うことです。弁護士として、〇件の再生案件を含めた〇件以上の倒産案件を処理してきて、倒産事業再生の分野での弁護士としての専門性が身につきました。
しかしながら、倒産事業再生の業務を行うにあたって、法律の枠にとらわれない、より高度なビジネスの知識やスキルが必要だと感じることが、多くありました。例えば、(具体的)。そのため、そのようなビジネスの知識やスキルがあれば、倒産再生弁護士として、さらに最適なリーガルサービスを提供し、より多くの企業を救うことができるのです。
そして、私のキャリア目標を達成するために、私は、以下の理由によりHECのMBAがベストだと考えています。
まず、HECの高度なダイバーシティは、私に様々なものの見方、知見を与えてくれるでしょう。そして、これらは、将来出会うであろう顧客の多様かつ複雑な問題に対して、多面的で柔軟なアプローチを可能にしてくれるものと思います。
HECの競争的ではなく協調的なカルチャーも、そのような学びを深める上で、またとない環境です。
さらに、上記のとおり、私がキャリア目標を達成するうえでは、…という分野の知識が不可欠であり、これらはいずれもHECのMBAにおいて提供されるものです。
最後に、HECの16か月という期間も、このような学びの上で、最適な期間だと思います。
以上の理由から、私のキャリア目標を達成するために、今、HECのMBAが必要であると考えています。
以上の内容は、この記事(【自己紹介】HEC Paris 合格体験記)でも触れた、私がMBAを志望した理由の1つでもあり、それになぜHEC Parisなのかという点を追加したものです。MBAを目指す弁護士であれば、この手のエッセイに対して、今以上のビジネス知識があればどのようなサービスが可能になるのか、という観点で回答できるかと思います。
また、なぜHEC Parisなのかという点は、学校分析や情報収集が大事だと思います。この点は、在校生や卒業生と積極的に連絡を取ってみて話を聞いてみるのがよいと思います。また、キャンパスビジットをして感じたことや考えたことを書いてもアピールになるでしょう(これらの点で、私のエッセイは弱い部類だと思いますが)。
エッセイ2:今までに達成したことに対する私の回答
問:あなたが今までに達成した一番大きなことは何か(最大250語)。
この質問は、やりがいやクライアントに感謝された経験を語れるところだと思います。ご自身の仕事にやりがいを感じていたり、クライアントと直接やり取りされる方であれば、書きやすいと思います。
私は、倒産事業再生弁護士として、破産事件を通して、一人の経営者の命を救ったということを書きました。
ある会社の申立代理人(会社側の弁護士)として破産手続を行ったのですが、その事件が終わった後で、その代表者から感謝の気持ちとともに、私と会っていなければ今頃自殺していましたと言われ、改めて倒産事業再生弁護士としての仕事の意義・やりがいを感じたことを、文字にしてエッセイにまとめました。
エッセイ3:リーダーシップと倫理に対する私の回答
問:ビジネスの世界では、リーダーシップと倫理が絡み合う場面があるが、あなたがこのような問題に直面した状況を説明し、それがあなたにどのような影響を及ぼしたか説明しなさい(最大250語)。
このエッセイのお題は、ややトリッキーに感じますが、だれでも少なからず直面したことがある問題なのではないでしょうか。詳細は割愛しますが、私は弁護士として、この手の問題に直面した場面、それに対する対応、そこから学んだことを回答しました。
弁護士として、不利なことや未確定なことを含め、十分に説明責任を果たして、誠実に対処することで、相手の深い理解と協力を得ることができた。この経験を通じて、リーダーシップには誠実性が不可欠であると実感した、という内容でした。
エッセイ4:別の人生、に対する私の回答
問:あなたの人生が今と全く異なるものだとしたら、何をしているか(最大250語)。
このエッセイは正直、個人的に一番時間がかかったエッセイでした。
私は学生の頃、学校の先生になりたいと思っていた時期があったので、全く異なる人生としてまず思いついたのが教師でした。しかし、教師をベースに書こうとしたのですが、どうしても、なぜ教師なのかを、具体的なエピソードを織り交ぜながら字数制限の中でうまく説明できなかったのです。子供の頃、こういう先生に会って、こういう出来事があってこう感じた、だから自分も教師になりたかったという枠組みで書いてみましたが、自分が見ても内容の浅いエッセイになっていました。
そのため、いったん教師を離れ、検察官、NGO、国連職員、公務員等、いろいろな人生を考えました。しかし、やはりどれもしっくりくるものはなかったし、何より付け焼き刃感があり、教師以上に浅いストーリーになりかけていました。
そこで、もう1度、どうして教師になりたかったのかを、上記の枠組みにとらわれることなく、深く考え直しました。そして、その結果、自分は子供が好きということ以上に、「教育」に対する自分の根本的な考え方、自分が考える価値観を示すことにしました。カウンセラーとも相談して、具体的なエピソードにとらわれず、そのような自分の価値観のコア・意見を表現することを、このエッセイに対する回答の中心にし、結果的に自分でも納得のいくエッセイができました。
このアプローチより以外にも、こういうことが好きだから、こういうことをしているという回答の方がシンプルで分かりやすく、それはそれでアリだと思います。が、私自身は、時間をかけて作り上げた上記の回答で、エッセイを通じて自分の価値観や意見を見直すことが、よかったと思っています。
(②に続く)